これまでの研究により、イヤホンなどの個人聴取機器を使用しているユーザーは音量を105dB以上に設定している事が多く、娯楽施設での音量も平均104~112dBとごく短時間であっても許容範囲(成人80dB、小児75dB)を超えていると報告されているようです。そこでローレン・ディラード氏らは、若年者における個人聴取機器の使用と大音量の娯楽施設における音楽聴取による難聴リスクのある若者の人数を推定したのです。
2000年~2001年に3つのデータベースを検索、研究対象は20ヶ国の若者1万9,046人の記録35件(個人聴取機器使用17件8,987人、大音量の娯楽施設18件1万59人)、研究33件を抽出。個人聴取機器使用・大音量の娯楽施設参加による危険な音量への暴露率について、システマティックレビューを基に推定し2022年の12~34歳の世界人口予測値と合わせて難聴リスクがある若者の人数を推定しました。
17件の記録より、個人聴取機器使用による危険な音量への暴露率は23.81%(95%CI 18.99-29.42%)と推定されました。18件の記録からは推定値の確実性が低かった(p>0.5)事から、全ての研究において適合する二次モデルを使用し大音量の娯楽施設から過度の騒音への暴露推定有病率は48.20%と推定されました。
これらの結果と2022年の12~34歳の推定人口(28憶人)を合わせると、危険な音量への自発的な暴露によって難聴のリスクを有する若者は世界で6憶7000万人~13憶5000万人に及ぶと推計されました。
論文の中で、「安全でない聴き方によってダメージは生涯に渡り蓄積され、人生の早い時期に騒音にさらされた人は、加齢に伴う難聴になりやすい」と指摘しています。さらに各国政府が難聴予防を優先させなければ、将来的に難聴の人の割合が倍増する可能性があると警告しています。
標準化された研究手法の欠如や一部の国や地域における安全なリスニングに関する最近の変更を考慮していなかった等を研究の限界として挙げていますが、「限界はあるものの、政府や市民が安全な聞き方を促進し世界的な難聴予防が喫緊の課題である」と訴えています。
引用文献:Dilland LK, Arunda MO, et al. Prevalence and global estimates of unsafe listening practices in adolescents and young adults: a systematic review and meta-analysis 2022;BMJ Global Health